Come and visit TATE BRITAIN-William Holman Hunt(1827–1910)
2026.03.25
英国の画家と作品をどのくらい知っていますか?
最初に絵画を見た時の無垢な感動。それを大切にして美術館に足を運んでみましょう。
ここではロンドンにあるテート・ブリテンが収蔵する作品をご紹介します。詳細はテート・ブリテンのサイトをご覧ください。
ウィリアム・ホルマン・ハントはラファエル前派の創設の1人です。卓越した光の表現の「The Light of the World―世界の光」の作品では、キリスト像がとても印象的な光を放っています。同じ光をテーマにした「The Triumph of the Innocents-無垢の勝利」は、よく観ていたはずなのですが、その筆致に今回目を見張ってしまいました。ラファエル前派の画ですから、リアルに見たものを忠実に描くことを画の理念としています。
見入ってしまったのは、左上の子どもたちの身体を巻く布の質感です。布の厚みが手に取るようにわかります。眠っている子どもたちですが、この行進に加わっています。ハントの描いたこの画のテーマ、それは救世主が生まれたと聞きつけたヘロデ王が出した殺害命令。2才以下の子どもたちを殺してしまったのです。ハントはこの子どもたちへの鎮魂を表しています。史実ではイエスとマリア、ヨゼフはエジプトに逃れて難は逃れています。この画は逃れた聖家族だけを最初描くつもりだったようですが、殺されてしまったあどけない子どもたちも重ねることにしたとハントは後で語っています。
生きていた者たちの波動、空気が力強く描かれています。眠そうな子どもたちはもうこの世にはいないのですが、その命の尊さの空気を表現することを試みています。ハントは細部までを見事に鮮やかな色彩で描く画家です。聖地へ出かけ、その空気を吸い、リアルな画を完成することに努めました。1883年から1884年に描かれたこの「無垢の勝利」は、聖地を訪れた後に描かれた作品です。生きている聖家族に光は当たっていません。天に召された子どもたちだけに光が注いでいる美しい1枚です。
The Triumph of the Innocents
William Holman Hunt(1827–1910)