Tea Caddy~From the United Kingdom
2024.12.19
英国コラム
初めてイギリスへ行った遠い昔、帰ってしばらくするとNHKのBS放送でイギリス特集が放送されました。その特集は1日の放送時間が6時間以上もあり、また別の日に何回かに分けてイギリスを大特集したものでした。イギリスを訪れた女優たちがマナーハウスの室内で紅茶を飲みながら、その家の当主とお話している時に木箱が出されます。それがティキャディと呼ばれるものでした。
昔、紅茶はとても高価なものでした。最初は緑茶だったものから、発酵が進んだボヒー茶と呼ばれるものがイギリスでは主流になります。ボヒー茶はミルクとよく合い、イギリスの硬水との相性もよかったようで人気になります。でも緑茶もボヒー茶もとても貴重で高価なので、その家の女主人はその茶葉を入れる箱を作らせます。緑茶とボヒー茶を分けて入れられるようにし、木材も高価なマホガニーなどが使われます。ティキャディには鍵がつけられ、鍵は女主人がいつも持ち歩き、高価なお茶を管理していました。
NHKのBS特集の中でマナーハウスの家主は、ティキャディには鍵が大切なものと言っていました。家にティキャディがあることは生活の豊かさの象徴です。今ではティキャディはアンティークの人気のアイテム。2つの木箱と真ん中に茶葉を混ぜる硝子の入れ物があるウォルナットの木材ものも見つけました。でもとてもお高いものです。今では茶葉が安くなり、ティキャディの価値が高くなってしまいました。木材を吟味し象嵌細工を施したティキャディ。20世紀にはすっかりなくなってしまったようですので、マナーハウスに残っているティキャディは貴重なお宝です。
※写真のティキャディはPhotography Firmのものです。