テムズ河で岸辺のロンドンを楽しむクルーズ…キューガーデンからウエストミンスターへ
2024.07.23
ロンドンの夏、最近は温暖化の影響で陽ざしが強く暑い日も続いたりしています。昔は湿気もなく8月でも涼しい日が多かった気がします。避暑にちょうどいいロンドンでしたが、今ではエアコンを入れているホテルやショップばかりになりました。でも雨の日より晴れた日には、やはり郊外まで足を伸ばしてみたくなります。晴れた土曜日、王立植物園のキューガーデンに出かけてみることにしました。
ロンドン中心部からキューガーデンまでは地下鉄ディストリクトラインで30分ほど。キューガーデンの花は真夏過ぎには寂しくなってしまいますが、2つもある巨大な温室で1年中花々が楽しめます。1日でも回り切れない広大なキューガーデン。今回はランドマークの温室パームハウスからレイクを巡り、レストランでランチを楽しみ、キューパレスを見て回り、ショップでお土産を見つけます。さあ帰りは以前乗ったことのあるボートでロンドンまで戻る予定。テムズ河に近い出口を見つけましょう。
なかなかたどり着かないキューピア
以前のボートクルーズは行きあたりばったりで、それでもよくすぐにボートが来て事なきを得ましたが、今回はインターネットで調べて予約をしています。16時30分までにキューピア―キュー桟橋に着かなければなりません。
ひと気の少ない出入り口から駐車場の中を通り、テムズ河沿いの道を歩きます。以前も知らない道を歩き続け、先が見えない思いもしましたが、今回はボートの時間も予約もしてあるし、キューピアを目指すだけ。けれどその道は歩いても歩いても、まだまだ遠いと感じます。テムズ河沿いの学校らしきところでは音楽が流れ騒いでいるのも聞こえます。運動会をやっているようです。
テムズパスと呼ばれる歩行者専用の道を歩き、やがてキューブリッジが見えてきます。思い出しました。あの橋の向こうにキューピアがあったと記憶しています。以前はただの河辺でしたが、今は鬱蒼とした森の中にキューピアがあり、もうすでに大勢の人たちがボートを待っています。後で調べたら出口からキューピアまで約1.2キロ、15分以上は歩く道のりでした。
延々と歩きキューブリッジを過ぎると、今は立派なキューピアの看板が架かっていました。
ナロウボートとすれ違う
チケットを見せて乗船します。ボートのオープンデッキにみんな席をとります。誰も下のサルーン席には座りません。天気の好い日は暑くてもオープンデッキの方が景色を楽しめます。キューブリッジを背にして出航です。雲が出始めていたのですが、ボートが進むと青空が見えてきました。今日はクルーズ日和。ボートが進んで行くと、立漕ぎのパドルボードのカップルが現れます。暑い日が続いていたのでウォータースポーツにも精が出る季節です。でもどこまで漕いでいくのでしょうか。
ボートはロンドンのウエストミンスターに向かってテムズ河を進んでいきます。しばらくするとボートとすれ違います。これはナロウボートでしょうか。イギリスではこのナロウボートを住居にしている人たちがいるそうです。ボートで暮らしウィークディはそこから会社に向かい、ウィークエンドは好きなところへ航行します。何とも合理的で理想的な生活でしょうか。ロンドンでの住宅の家賃は高騰が続いています。ナロウボートにはキッチン、シャワー、トイレなども完備していて生活環境も好さそうです。ただしボートの生活者が増えていて、河川や運河の過密状態もあり、問題はいろいろとありそうです。
土曜日のこの日、テムズ河の上流に向かって10艘以上のナロウボートと思われる船とすれ違いました。
テムズ河の橋、橋、橋
キューブリッジからウエストミンスターブリッジまで、いくつ橋に出会えるのでしょうか。ボートでの移動は橋の通過も楽しめます。キューからウエストミンスターまでの橋を並べてみました。
Kew Bridge キューブリッジ
Kew Railway Bridge キュー鉄道橋
Chiswick Bridge チズウィックブリッジ
Barnes Bridge バーンズブリッジ
Hammersmith Bridge ハマースミスブリッジ
Putney Bridge パトニーブリッジ
Fulham Railway Bridge フラム鉄道橋
Wandsworth Bridge ワンズワースブリッジ
Battersea Railway Bridge バタシー鉄道橋
Battersea Bridge バタシーブリッジ
Albert Bridge アルバートブリッジ
Chelsea Bridge チェルシーブリッジ
Grosvenor Bridge グロブナー鉄道橋
Vauxhall Bridge ボクソールブリッジ
Lambeth Bridge ランベスブリッジ
Westminster Bridge ウエストミンスターブリッジ
またバタシーブリッジの側面、橋げたの細工も凝っています。ちょうど赤いロンドン名物の2階建てのバスのダブルデッカーが、橋を渡って彩りを添えてくれました。夜になると橋を照らす電灯も一灯と三灯とアクセントされて配置しているようです。夜も見てみたい橋でした。バタシーブリッジを過ぎると、アルバートブリッジ、チェルシーブリッジと続き、もう間もなく終着のウエストミンスターピアです。
イギリスの国会議事堂が見えてきます。ビッグベンの名で有名ですが、実はその名は大時計だけのことを指します。時計塔は2012年にエリザベス2世の即位60周年を記念して、エリザベスタワーの名が冠されました。2019年にロンドン滞在中、この時計塔は大規模補修中でしたので足場が組まれていましたが、今日は堂々と時計塔全体が見渡せます。ちょうど6時前、ロンドンの夏の夕暮れはマジックアワーとはいきませんが、荘厳な佇まいを見せてくれます。ウエストミンスターブリッジの下を潜ると、もうクルーズはお仕舞です。
※写真は左からハマースミスブリッジ、バタシーブリッジ、ウエストミンスターブリッジです。
セントラルロンドンに入ると風景が一変
以前もキューからこのテムズ河のクルーズを楽しんだことがあるのですが、久しぶりに乗るとロンドン中心部の景色がイギリスとは思えないくらい高層ビルが目立っていて驚きます。キューからのんびりとイギリスらしい家並みを見ていたのですが、パトニーブリッジを過ぎると何だか高い建物が増えてきます。ワンズワースブリッジ通過すると、右手に新しい高層ビルがちらほら、右手のチェルシーの緑とは対照的な風景が見えています。
チェルシーブリッジとグロブナー鉄道橋を越えると、右手には有名なバタシーの発電所。白い巨大な煙突はなかなかの迫力です。4本の煙突は今使われていませんが、世界最大のレンガの建造物は保護され、巨大な複合施設としてその外観は健在です。新しい建物ばかりではないロンドンの街並み、やはり素敵に見えます。
地震のない国だから築400年、300年の建造物があたりまえのイギリス。けれどロンドンに不動産投資をする外国人の影響で、超高層の建造物が林立してしまっています。特にテムズ河の南岸に再開発の大波がやってきていました。イギリス人は元々天候不順が多いうえ、冬の季節は日照時間が少ないので住宅の日当たりはあまり気にしません。でも海外の富裕層たちは住宅の前を遮るものを嫌い、眺めのよい暮らしを望むので、どんどんと高層化してしまったようです。
テムズ河上流の穏やかな風景が、セントラルロンドンでは一変してしまいました。それも時代の流れなのでしょうが、ロンドンのいつまでも変わらない風景がこれからも残っていくことを願っています。