Savoury Baking イギリスの甘くないパン、タルト、パイをご紹介
2024.12.22
イギリスはスイーツばかりと思っていたら、なかなかセイヴァリーなパイやタルト、パンもあるんです。セイヴァリーとは味の好いという意味もありますが、ここでは塩味、甘くないものを指しています。セイヴァリーなパンなら、日本ならお惣菜パンなどと呼んだりもしています。今回は甘くないイギリスのお話。いったいどんなパイやタルト、パンがあるのでしょうか。
ショートクラスト、パフクラスト、ホットウォータークラストで作るペストリーって??
ペストリーという言葉。知ってはいますけれど、説明となると難しいところです。ペストリーは小麦粉にバターや植物油脂のショートニングや塩、砂糖、卵などを加えて作られる生地のことらしいのです。
シュートクラストはそのペストリーの種類の1つです。他にはサクサクとした層を作る生地のパフクラスト。これはラフパフペストリーとも呼ばれ、イギリスの生地の代表です。またお湯で作るホットウォータークラストは、バターや卵などを使わずサクサクとした食感を生み出します。ホットウォータークラストは安価なラードなどを代用したもので、イギリスではよく使われています。
ショートクラストペストリーは、サクサクとしたパフペストリーと同じペストリーですが、下に敷くことが多く、練りこんだ生地は、その後パイやタルトの生地に仕上げるために、折ったり、寝かしたり、違う工程に進みます。
次にショートクラストやホットウォータークラストで作られた、甘くないセイヴァリーなパイやタルト、パンをご紹介していきます。
ショートクラスト、ホットウォータークラストを使ったセイヴァリーなアレコレ
イギリスのパブランチの定番メニューのシェパーズパイ。ひき肉とマッシュポテトで作ります。ショートクラストを下に敷き、こんがりと焼き上げ、熱々で美味しいパイです。パイという名なのにショートクラストを敷かないものもありますが、コロッケの中身を焼き上げたようで、日本人の口には合います。シェパーズパイは羊のひき肉を使い、コッテージパイは牛のひき肉を使い分けているところにイギリス人のこだわりが伺えます。
Bedfordshire Clanger ベドフォードクランガー
このベドフォードクランガーは完全なお惣菜系ではないのですが、ご紹介したい一品です。ひき肉とアップルなどのダブルフィリングをショートクラストで巻きます。いっしょにしないで、あえて別々に巻いたダブルフィリングは甘いのか塩味なのか、楽しみながらいただけます。クランガーは別名細長い餃子。でも春巻きのようなカタチをしています。
Cornish Pasty コーニッシュパスティ
最近は日本のベーカリーでも見かけるようになりました。このコーニッシュパスティは、イギリスのコーンウォール発祥なので、コーニッシュと名づけられています。かつて鉱山で働く男たちがコーニッシュパスティをランチとしていたそうで、手でつかみやすいように耳が作られています。中身は牛肉、じゃがいも、玉ねぎなど。美味しくないわけがありません。コーニッシュパスティは、ショートクラストでもパフクラストでも作れるそうです。
Pork Pie ポークパイ
伝統的なイギリスのセイヴァリーなパイが、ポークパイ。温めないでそのまま食べるものです。中世の頃から似たレシピがあり、元は甘いものも入ったパイだったようです。19世紀までには今のポークパイのカタチになりました。ピクニックや夕方のハイティのフードとしても作り置きできます。ホットウォータークラストが生地になっています。
Picnic Pie ピクニックパイ
ランチやピクニックで楽しめるピクニックパイ。カタチは切り分けるポークパイに似ていますが、中身にはリンゴや玉ねぎをすりおろしたり、色とりどりの野菜を入れたりもします。レインボービクニックパイの名で、いろいろな具を積み重ねているものも見たことがあります。こちらもホットウォータークラストの生地で作られています。
※写真はパブのちょっとアレンジしているシェパーズパイとポークパイ
次はサクッとしたパフクラストで作るセイヴァリーなアレコレをご紹介します。
パフクラストを使ったセイヴァリーなアレコレ
ホミティパイは野菜たくさんの具と、パフクラストでサクッと作り上げたもの。イギリスの伝統的なベジタブルパイは、下に敷いたパフクラストの中じゃがいも、玉ねぎなどのフィリングを入れて、チーズを乗せて焼き上げます。第二次世界大戦の戦時下の配給食料で作られたとも言われていますが、目の前にあるものを詰め込んで、素朴で美味しく仕上げたパイは美味しそうです。
Savoury Turnovers セイヴァリーターンオーバーズ
パフクラストを生地に、食べやすく2つに折ったセイヴァリーターンオーバーズ。セイヴァリーターンオーバーズの追った中にはハムやチーズ、マッシュルーム、ソーセージやチーズを入れたりしています。もちろんベリー類やアップルの甘いものも作られています。マックの三角チョコパイの総菜版かもしれません。
Chicken Pot Pie チキンポットパイ
最近は冬になると、ケンタのメニューにも登場するチキンポットパイ。サクサクのパイの中身がチキンとたくさんの野菜で、クリームのソースで仕上げます。玉ねぎや人参、セロリやありもの野菜も入れてチキンを煮込みましょう。ホワイトソースの温かいごちそうになります。
Sausage Roll ソーセージロール
こちらも最近日本のベーカリーで見かけるソーセージロール。ソーセージをパフペストリーで巻いて焼き上げます。イギリスのベーカリーでも定番の商品で、ランチやピクニックでよく食べます。ソーセージロールはイギリスだけだはなく、ベルギーやオランダ、ドイツにもあり、手軽で美味しいものとして人気のようです。
Coronation Chicken Pie コロネーションチキンパイ
コロネーションとは戴冠式のこと。1953年に行われたエリザベス女王の戴冠式の時にふるまわれたもので、カレーとクリームソースで和えたチキンです。今ではサンドイッチのフィリングとしても定番になっていますが、パイにも使われるフィリングです。
ちなみにパイには、上と下の両方に使うdouble-crust pie―ダブルクラストパイ、上だけに使うtop-crust pie-トップクラストパイがあります。シチューなどのフィリングは下に敷くと生地に火が通らないので、トップクラストパイにするそうです。
※写真はセイヴァリーターンオーバーズとソーセージロール
セイヴァリーなものアレコレ
生地はクラストではありませんが、イギリスで見かけるセイヴァリーなお味のものをご紹介していきましょう。
トルティーヤは、メキシコ料理に出てくるトウモロコシの薄いパンのことです。最近は小麦粉を使うものも多いようです。タコスやブリート―などでもいただけますが、ラップはやわらかく薄いパンで具を巻いたロールサンドイッチ。日本のカフェやコンビニエンスストアでも、ラップのメニューは出回っています。チーズにハム、刻んだキャベツにパプリカなどの野菜やローストビーフと何でも巻いて美味しくいただけます。
Cottage Loaf コテージローフ
イギリスの伝統的なコテージローフは、フランスのパンのブリオッシュに似ているかもしれません。盛り上がった帽子のようなパンとその下にさらにおおきな土台のパンが重なって焼き上げられています。でも中には何も入っていないので、ハム、チーズや野菜を挟んでプラウマンズランチにしてみましょう。
Toad in the Holeトードインザホール
トードインザホール、その意味は穴の中のヒキガエルですが、けしてカエルを使ったものではありません。元々はクラストで煮た肉だったらしいのですが、ソーセージをカエルに見立て、ローストビーフの付け合わせのヨークシャープディングを穴にしてみたようです。かけるオニオングレービーソースとの相性も最高です。これはクラストではなく、バッタープディングと呼ばれる生地がベースです。
※写真はコテージローフとトードインザホール
イギリスのセイヴァリーなパイやタルト、パンを愉しみましょう
さて他にもいろいろなお惣菜系のアレコレが見つかりました。サマーベジタブルタルト、ソーダブレッド、ビーフウエリントンなどなど、そしてコヴェントガーデン近くのカフェで見つけたとろけるチーズとオニオンとケールのトースティという名のサンドイッチ。とても美味しそうだったので、インスタグラムでこのカフェをフォローしていたのですが、なかなか新着が上がってきません。よく調べるとこのお店、すでにクローズしてしまったようです。次回のロンドン歩きの愉しみのひとつだったので、残念でなりません。
久々のハロッズのフードホールに向かいます。美味しそうなお惣菜系のパイやサンドイッチなどが、ショーケースに美しく並べられ、見ているだけで愉しくなります。チキン&リークのパイ、チキンカツサンド、Wagyuステーキサンドイッチとあり、チキンカツと和牛ステーキはもう英語として十分にロンドンでは馴染みのあるものになっています。また滞在先の近くのスーパーマーケットでは、イギリスの伝統的なフィッシュケーキが2個買えば少し安くなるプライスで売られていました。フィッシュケーキはタラなどをスモークしたものと牛乳とマッシュポテトで具を作り、パン粉をつけて揚げたもので、日本では魚介のコロッケになりそうです。もうこれは美味しくないわけないひと品です。
最近はスーパーマーケットで冷凍のパイ生地等が売っていますので、簡単で楽にパイやタルト作りができます。それでも基本のショートクラスト、パフクラスト、ホットウォータークラスト作りがイギリスにはあります。今回はイギリスのセイヴァリー、甘くない塩味のパイやタルトのアレコレをご紹介しました。イギリスにお出かけになったらいろいろと探してみてください。
※写真はビーフウエリントンと、ハロッズのフードホールのチキン&リークパイとチキンカツサンドです。