Kelmscott House~From the United Kingdom

2024.05.21

英国コラム

ロンドン市街のほど近くテムズ河のほとりに建つその家は、18世紀末のジョージアン時代のもの。

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1878年からウィリアム・モリスが最後まで住んだ家はケルムスコット・ハウスと呼ばれています。テムズの源流のコッツウォルズに、元々モリスが家族と住むケルムスコット・マナーはありましたが、ロンドンから遠いので仕事に不便だったため、この家に家族を置いて移り住みます。同じ名をつけたのは、テムズを下ってもつながっていたいという気持ちのあらわれなのでしょう。妻のジェーンとは行き違い、離れて暮らしたかった思いと、いっしょにいたい思い。結婚生活において、妻との不思議な関係が続いていたモリスの処世は誰にもわかりません。

ロンドンのテムズのほとりで同じ名の家に住み、終の棲家となったわけです。今のケルムスコット・ハウスはウィリアム・モリス協会の本部があり、木曜と土曜の午後は地下の博物館を見学することができます。上階は居住者がいるので、実際にモリスの暮らした部屋は見ることはできませんが、この家の素晴らしさのひとつにロケーションにあります。間近に見渡せるテムズ河。好い季節には、河でボートを漕ぐ人々、水遊びに興じる子どもたち、岸辺で羽を休める水鳥たちが手にとるように見ることができます。

ジョージアン・スタイルの外観全体には凝った造りはなく華やかさはないものの、玄関の扉の意匠に目が留まります。扉の上部に明かり採りの半円窓があり、これがまさしくジョージアン・スタイルの特徴。最寄りの駅からテムズに向かう道も、教会、家々と愉しみながら歩けます。

地下鉄のラベンズコートから徒歩15分ほど。お散歩がてらにぜひお出かけください。もちろん木曜と土曜の午後がお勧めです。

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