Royal Academy of Arts~From the United Kingdom

2025.03.18

英国コラム

ロンドンの中心地、ピカデリーの大通りに面したロイヤルアカデミーオブアーツ。ここはイギリスの芸術の殿堂で1768年に設立されました。なかなかイギリス美術と言っても、思いつくものは少ないかもしれません。今ではラファエル前派の作品は、ヴィクトリア時代を代表する耽美的な画として日本でも有名になりました。しかし彼らは当時ロイヤルアカデミーオブアーツに対して、反旗を翻そうと画策したのです。

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ロイヤルアカデミーオブアーツの初代会長はジョシュア・レイノルズ。レイノルズは子どもの肖像画家として名を馳せていました。しかしその画には旧態依然とした体質が根強い傾向にありました。その体質は19世紀半ばになってもそのままだったようです。ロイヤルアカデミーの美術学校に通っていた3人の若い画家、ダンテ・ガブリエル・ロセッティ、ジョン・エヴァレット・ミレイ、ウィリアム・ホルマン・ハントの3人は、アカデミーの保守的な画に辟易し、新しい表現を求めようとラファエル前派を結成し作品を発表します。特に神童とうたわれたミレイの画「両親の家のキリスト」は酷評され、彼らはヴィクトリア時代の人々から評判を得ることはできませんでした。異端・異種なものはなかなか受け入れてもらえなかったようです。

それでもミレイは「オフィーリア」をはじめ次々と名作を描き出し、ロイヤルアカデミーオブアーツの準会員、正会員に選出されます。ついに1896年にはロイヤルアカデミーオブアーツの会長に就任します。しかし就任半年後、ミレイは病気のため亡くなります。もうとうにロセッティは鬼籍に、ハントは聖地への旅へ。ミレイだけが順調な成功者になったかのようでした。かつて反抗しようとしたロイヤルアカデミーオブアーツの狗になったと、ロセッティはミレイを揶揄しそうですが、ラファエル前派の中の実力者であり、成功者に変わりはありません。

ロイヤルアカデミーオブアーツは、老舗食材店フォートナム&メイソンの向かい側にあります。赤い旗がいつも掛かっています。隣接するバーリントンアーケードとともに、ロンドンでは訪れないことはない場所です。無料展示もあり、またカフェも充実しています。

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