ロンドンの街歩きの愉しみ-ブループラークを探してみよう
2025.04.24
イギリスの街を歩いていると青く丸い銘板が目に入ります。これはイングリッシュヘリテージが著名人のかつての住まいなどに掲げているもの。ロンドンの街歩きではよくこの青い銘板―ブループラークを目にします。どんな人が目の前の場所に住んでいたのか、想いを巡らせながら街を歩いてみましょう。ロンドンではブループラークでたくさんの発見ができます。
The Pre-Raphaelite Brotherhood 1848
ロンドンの大英博物館を出て歩いていると、いくつものブループラークに出会えます。ここにも、あら向かいのあちらにもとブループラークを見つけてはカメラを向けて歩いていると、工事中の家の壁にも1つのブループラーク。カメラを望遠にして狙います。その時ブループラークの文字が飛び込んできました。
In this house THE PRE-RAPHAELITE BROTHERHOOD was founded in 1848
ラファエル前派が結成された場所。美術史の勉強をしていた頃、卒論のテーマを考えあぐねていました。大学の図書館で画集をめくりながら、あれでもない、これでもないと画を見続けていると、一枚の画のページで手が止まります。物語の瞬間、そんな1枚その画に引き寄せられました。それがラファエル前派との出会いになります。
今でこそラファエル前派の名や、小川を流れてゆく「オフィーリア」の画は知られるようになりましたが、当時日本でラファエル前派の画が展示されることもなく、日本語の文献も少ないため英語の本を教授に借りたり、洋書店でとり寄せたりしての勉強が続きます。1848年に3人の画家たちによって結成されたラファエル前派。様式にがんじがらめになっている画壇の態勢を変革すべき画を描くために、自然に忠実なリアルな画風を目指したイギリス近代美術の一派でした。どこかイラストのような画のタイトルも確かに多いのですが、画の前に立つと額に囲まれた物語に引き込まれる力を感じてしまいます。
ラファエル前派の画の本物を1枚も観ずに卒論を仕上げることになりましたが、これはイギリスが呼んでいると思い、やがて何度も出かけていくことになります。けれど結成の地がどこかは知りません。ロンドンの高級住宅の一角ですから、学生たちが住める場所ではないのです。ここはラファエル前派の創設者の1人、ジョン・エヴェレット・ミレイのご実家だったようです。ラファエル前派の画家たちの中ではミレイと、追随するウィリアム・モリスの家はとても裕福な家の出でした。
さまざまな著名人がそこで生活を営み、歴史を積み重ねた同じ場所に、今の人々が暮らしているイギリスの住まい。それを知らせてくれるのがブループラークです。ロンドンの街歩きの偶然な出会いを期待して、また出かけていきたいと思います。