Jet~From the United Kingdom
2024.09.15
英国コラム
英国のヴィクトリア時代に流行ったモーニングジュエリーがジェット。ジュラ紀のチリ松の流木が化石となり、黒い宝石を生み出しました。
数億年もの時を経たジェットは、ネックレスやブローチなどに加工されて、服喪用として使われてきたそうです。元々は古代の人々が魔除けや御守りとして用いられていたようで、世界中で産出される宝石です。その中でもイングランド北部のウィットビーの鉱山から見つかったジェットは品質も良く、大切にされていました。
1861年にヴィクトリア女王の夫君のアルバート公が他界されると、女王は嘆き悲しみ、長いこと服喪されていました。その時に身につけられたのがjetのモーニングジュエリー。女王はこのジェットを生涯身につけていたと言われています。英国ではジェットのモーニングジュエリーが大流行し、やがてヨーロッパ中に広まりました。残念ながら、19世紀末でウィットビーは閉山し、ジェットは幻のジュエリーとなりました。その後中国での産出ができるようになり、今でもウイットビーの街ではジェットのショップはあるようですが… Made in Chinaなんでしょうか…
そうそう思い出しました。A・S・バイオット作の「抱擁」は映画にもなりましたが、ヴイクトリア時代の詩人ふたりが恋に落ち、不倫の旅に出たところがウィットビーでした。ふたりはブローチを買い求めていましたが、それがジェットのようです。一度訪ねてみたいところです。
※写真はウイットビーの海とジェットのネックレス。