Soap~From the United Kingdom

2024.03.03

異文化理解

イギリスの石鹸の歴史はペアーズとともにあると言えるでしょう。1807年創業のペアーズ・ソープ。でもそれより前の1789年に、透明な今のような石鹸を作っていたとは驚きです。

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美白を求める富裕層のニーズに応えるように、ペアーズの創業者アンドリュー・ペアーズが生み出した透明石鹸。ペアーズは1885年には当時の画伯、ジョン・エヴァレット・ミレイに広告の画を依頼し、その愛くるしい少年とシャボンの画はとても有名な1枚になります。1894年にオーブリー・ビアズリーが、広告美術の先駆者となる以前に広告に画を用いたのですから、ペアーズの広告戦略も興味深いところです。

石鹸は元々身体を清浄し、衣服などを洗浄する優れものとして、いにしえの時代から使われました。インダス文明のモヘンジョダロには大浴場があり、人々は水浴し、石鹸の原料のソーダで洗い、その後にオイルで潤いを保つようにしていたそうです。身体を清潔にする歴史は古くからあったのに、中世以降は共同浴場でペストやコレラなどがうつる懸念から、入浴は個人宅でするようになったと言われています。日本では心身を清める入浴は奨励され、湯屋、銭湯が江戸の町に建ち並んだ時代、火事の懸念から日本では個人で風呂を持てない時代だからこその銭湯だったようです。石鹸ではなく、日本はぬか袋で洗う習慣が根づいていました。

ではイギリスでのバスタイムで、ありがちな経験をご紹介しましょう。お湯をバスタブに貯めることはどこも同じですが、洗い流す時に栓を抜いても、なかなか貯めたお湯がはけない場合があります。実はロンドンの5つ星の最高級ホテルに泊まった時も、浴槽の水はけはよくありませんでした。これは石鹸を洗い流さないからという説もありますが、排水溝の洗浄があまりされていないからなのかもしれません。そのうえシャワーの水圧も低いので、日本のようなシャワーを期待してもダメ。シャワーも固定されたものだったり、シャワーカーテンがなかったり、バスルームの床が絨毯だったり、ぬるいお湯しか出なかったり、すぐにお湯がなくなったり、お風呂にまつわるその苦労は尽きません。

明日日本に帰るという日は、これでこのお風呂とお別れかと思うと、何だか寂しい気持ちになったりするくらい、イギリスでのお風呂の思い出はたくさんあります。またイギリスを再訪した際も、このお風呂に入ると懐かしさが込み上げてしまうのですから、何とも不思議なイギリスのお風呂事情もご紹介しました。