女王のいないイギリス―June 2023

2023.07.15

お役立ち情報

4年ぶりのイギリス。でもこの3年間世界は閉ざされていました。あたりまえのように行き来していた海外どころか、国内の行き来も規制されていた緊急事態。パンデミックの終わりが見えてやっとイギリスへの旅を予約、そして4年ぶりに行くことができました。ロンドンに着いてみると、こんなに日本人にほとんど会うことがないのは初めてです。いや往きの飛行機内にもあまり日本人はいなかったようでした。

たった4年間、でももう4年間。この4年で変わったこと、それはもう女王のいないイギリスです。終わったばかりのイギリスの旅を今回ご紹介します。


ロンドンはひどく暑く冷房エアコン全開

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確かに4年前も陽ざしが強い日、ロンドンとは思えないほど蒸し暑い日がありました。今年の6月は雨に少しだけ濡れましたが、またもや好天続き。地下鉄のアナウンスでも水分補給を呼びかけていました。レストランでも水を要るかと訊かれ、ほとんど無料の水がサービスされます。ガストロパブでもピッチャーに並々と水を用意してくれました。これではますますお酒が進みます。ビールに始まりワイン、スコッチウィスキーのシングルモルトをいただきました。

そしてホテルで冷房を使った記憶はなかったと思いましたが、部屋に入るとキンキンに冷えています。ロンドンのホテルでは冷房はあたりまえ。スコットランドも陽ざしがないと冷え込みますが、暑いくらいの陽気が迎えてくれました。ただスコットランドの離島ではさすがにエアコンの冷房設備はありません。オイルヒーターがあるだけでした。戻ったロンドンでも好天が続きます。以前よく通っていたファーマシーのチェーン店Bootsに冷房はなく、働いていたオジサンがとても気の毒でしたが、今は冷え冷えで元気なオネエサンたちが対応してくれます。

あのパンデミックで、この場所にいた人たちはどうなったのか心配していました。けれど4年経つとホテルでもパブでも見た顔の人に会うことはありません。まあ日本でも同じ場所で同じ顔に出会うことは、滅多にありませんから当然のことでしょう。けれどBBCの朝のニュースキャスターたちには懐かしい顔がありました。週後半のイケてるオジサマと聡明な黒人女性のコンビは懐かしく、以前と同様観ていました。


期待を裏切る美味しいイギリスにびっくり

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今回のイギリスの食事、あのイギリスに戻ってきた感に一度も不思議と遭遇しませんでした。イギリスは不味い、もうその汚名は返上でしょうか。でも今まで何度も味わってきたイギリスの食事。確かに4年前にも期待を裏切らないその洗礼はありました。日本ではもう夜が明けそうな深夜時間にホテルにチェックイン。何か軽く食べに友人と出かけましたが、頼んだラザニアが味もラザニアのテクスチャー(食感)もなく、到着早々ああこれってロンドン、と戻って来たことを実感していました。

今回の食事の忘れられないのはガストロパブ。ガストロパブはガストロミー(美食)のパブで、20世紀末から提唱されてきたようです。パブもアルコールの提供だけではなく。食への目覚めを感じてもらえるサービスが始まっていました。ここのガストロパブのステーキと野菜の美味しいこと、そしてコッテージパイも牛の頬肉のシチューの上に踊っているマッシュポテト。見映えも素敵です。このガストロパブは滞在先の近くの初めて行ったパブでしたが、その美味しさにロンドンに戻って来てから予約してまた出かけました。ほんとに美味しいパブのお料理でした。

スコットランドのある島では毎晩ホテルのレストランでしたが、そこの食事も最高でした。シーズンではなかったので懸念はありましたが、生牡蠣の素晴らしさ。そんなに大きな牡蠣ではありませんが、プリッとした食感がたまりません。また本日の出来立てスープ、その完全な味付けに驚きます。今までイギリスで出会ったスープは見た目が素敵なのに、何か味もコクもない、まったりとしたものばかりだったので、この美味しさは忘れられません。さらにロンドンのガーデンレストランでも素晴らしいランチを楽しめ、美味しいイギリスを堪能できた旅になりました。

余談ですが、ガストロパブの日曜の再訪の時のことです。私たちが席に着くとしばらくして、隣にアジア人らしい男性がひとりで案内されました。スマホを片手にメニューを検討しています。滝沢カレン似のオネエサンがオーダーにやって来てもまだ後でと頼みません。結局私たちが最後のラムソーダを呑んで食事を終えようとする頃まで、ずっとそのままでした。どうやらメニューをスマホのカメラで翻訳して解読していたようです。アレルギーでもない限り、読めたものを頼まないと海外では暮らせないのではないかと、少しだけ心配になりました。

王室関係のグッズにもう女王はいない?

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今までお土産ショップにあふれていたエリザベス女王。お土産のビスケット缶は最高の笑顔で飾られていたのに、今はチャールズ国王の治世に変わっています。チャールズ国王のビスケット缶。でもこのビスケット缶、売れるのでしょうか。誰が買うのか、手を出すのをためらってします。女王のビスケット缶もまだ少しは出ています。でも時代は確実に国王に引き継がれています。

今回はケンジントンパレスのショップと、バッキンガムパレスのショップに出向きましたが、もう女王関連のものはあまりありません。パレスミント、重厚なピルケース、バッキンガムパレスの刺繍の入ったふかふかのフェイスタオルを買ってみましたが… 何か以前とはお土産らしい感じがありません。パンデミックの影響なのか、日本人がまとめて買うお土産ショップはあまり見当たりません。物価高のせいかあまり品質の好さそうなモノでもなさそうです。

コヴェントガーデンにある交通博物館のミュージアムショップに一縷の望みをかけましたが、ダメでした。4年前はイギリスらしいシール、ダブルデッカーのかわいい缶に入ったミントと、お気に入りを見つけましたが、地下鉄マークのTシャツもほしいデザインはサイズがなく、無難なものを選びました。帰りのヒースロー空港内のWHSmithにユニオンジャックのペンシルケースなどがあり、最後の最後に自分用に購入し、すぐに使ってみました。

2022年6月、エリザベス女王の即位70周年記念式典のダイヤモンドジュビリーが盛大に挙行されました。あれから1年のロンドンはまた多くの人々と観光客であふれていました。2022年9月に突然の悲しみが訪れ、今や女王はイギリスにはいません。パンデミックの後の女王の国葬が終わってしまうと、責務を果たした女王は空に還ってしまったのでしょうか。女王のいない初めてのイギリス。何かどこか違っているのを感じた旅でもありました。


Postscript

そして日本に帰国したばかりの朝のことです。地下鉄のエレベーターに無理くり乗り込んできた年配女性。階のボタンを押してないことに逆切れされ、「押せ、早く」と怒鳴られてしまいました。ロンドンの地下鉄のリフトにはボタンはなく、自動で乗り降りするリフトに慣れ、イギリスボケをしていた自分に気がつきました。

羽田から朝の通勤する日本人たちに、不気味な静けさを感じてしまいました。何を考えているのかわからない人たちに見えてしまいました。エレベーターで怒鳴った女性にもその朝余裕がなかったのでしょう。イギリスを旅している年配の人たちの心の余裕とは全く違います。お年寄りたちが元気で海外旅行をしている姿をたくさん見て、話しかけられてたくさん会話をしました。旅を終えて日常生活に戻ると、心のゆとりは自分でつくらなければいけないと感じています。