7 Gower St, Bloomsbury, London ~From the United Kingdom

2023.03.10

英国史雑学

ここがロンドンに向かわせる理由の場所のひとつでした。その日、大英博物館のほど近く、ここは著名人の住まいやお歴史的な出来事があった場所に掲げられる青い銘板、ブルー・プラークを探して歩いていました。右の住宅の壁に左にその先に、歩いているだけでたくさんのブルー・プラークに出会えます。その時に目に入ったもの。望遠レンズで向かいの壁にカメラを向けた時に気づきました。

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In this house The PRE-RAPHAELITE BROTHERHOOD was founded in 1848

思わずカメラを落としそうになるほど放心してしまいました。1848年ラファエル前派が結成された家、まさか偶然に出会えるとは思ってもみませんでした。そのブルー・プラークの写真をカメラに収めて、ゆっくりと家を見てみます。ロンドンでは何の変哲もないフラット、集合住宅です。フラット全体を改修しているのか、建物に足場が組まれ、入り口の歩道も掘り返されています。奇跡的にブルー・プラークが掲げられているところは足場がなく、だからこそ気づけた場所でした。

大学時代の図書館で、何気にめくった画集から飛び込んできた1枚の絵。それがラファエル前派の中心人物、ダンテ・ガブリエル・ロセッティの絵でした。卒論のテーマの作品を決めかねていたので、その絵とラファエル前派の周辺をテーマに定めた次第です。そこからその絵が収蔵されている美術館、テートに行きたいと思うようになり、まだテート・ギャラリーの名だった時に行くことはかないました。その後も彼らの居た場所を調べる術もなく、ウィリアム・モリスのギャラリーを見つけて出かけたくらいでした。今回の旅では、できるだけ彼らの居た場所に近づきたくて、インターネットで調べて続けて、ロンドンを訪れています。モリスが若い頃暮らした家の場所、モリスが新婚時代に過ごした家への行き方を知り、その家の内覧の予約をできました。でもやはりモリス中心。ロセッティも居たモリスの家に行けた程度でした。

行きたかった場所のひとつ、それが今、目の前にあるのです。ここはラファエル前派の結成の地。1848年、ロイヤル・アカデミーの学生だったロセッティらが集まったこの場所で、ロイヤル・アカデミーへの反発を企てました。様式にはまらない彼らの絵は当時スキャンダルとなり、長い間認められないグループとなってしまいました。しかしその後の絵画の世界に一石を投じ、影響を受ける後継者たちが輩出されました。

この場所はラファエル前派の中心人物のひとり、ジョン・エヴァレット・ミレイの暮らしていた家だったと記憶しています。ロンドンの閑静な住宅街に家を構えることができるのは、比較的裕福な家庭の出のミレイだからこそです。若き日のラファエル前派の息遣いを感じられるよう、大きく息を吸ってきました。ブルー・プラークと同じ青いドアが鮮やかです。その日のロンドンは晴れ渡り、真っ青な空を見せてくれました。