Eleven Missing~From the United Kingdom
2022.11.30
11人の失踪?? これではまるで推理小説のタイトルのようですが、このイレブンミッシングは「11日間の失踪」と呼ばれ、失踪を引き起こしたのは何とあの「ミステリーの女王」イギリスの作家アガサ・クリスティーと聞いて、さらに驚きました。アガサ・クリスティーが失踪するとは、いったい何があったのでしょうか。
アガサ・クリスティーは1890年に生まれ、1909年には小説を書き始めています。1914年に結婚、その5年後には娘も誕生します。その後も小説を書き溜め、1920年には作家としての人生を歩み始めます。1926年に「アクロイド殺し」でその名を有名にします。夫と娘との暮らし、そして作家としての順調な滑り出しでしたが、その1926年12月3日、アガサは自宅を出たまま行方不明になります。夫に殺された?? そんな疑惑も飛び交い、警察は事件と考え捜索を始めます、しかし彼女のその行く先は…?
アガサ・クリスティーがイングランド北部のハロゲイトにある、オールドスワンホテルに偽名でチェックインしたのは12月4日の土曜日。ハロゲイトは温泉地として有名な場所で、オールドスワンホテルも明るく、居心地の好さそうなホテルです。しかしこのホテルの一室でアガサはひとり苦しんでいたようです。失踪の理由には離婚を申し出でいる夫を取り戻すためとも報じられましたが、ほんとうの理由はアガサにしかわかりません。その11日間という時間は、アガサ・クリスティーのこれからの作品に反映されるための時間だったのかもしれません。
アガサ・クリスティーの小説には考え抜かれたプロットがあります。「ストーリー展開には時間がかかる」とアガサの言葉が残されています。確かにモノを作り出すには生みの苦しみがあります。ひねり、嘘の使い方。アガサの作品には、卓越した何層もの嘘があるそうで、犯人とは知らずに読者は感情移入して騙され、裏切られる結末を知って驚きます。考え抜いて生み出されたその小説の数々は、今でも多くの人々を魅了してやみません。
1930年に年下の考古学者と再婚するアガサ・クリスティー。そして14才年下の夫に看取られ、アガサは1976年85才で亡くなります。小説とは裏腹の穏やかな最期だったそうです。年下の夫には長く別の愛人がいて、アガサが亡くなった翌年に再婚をします。不思議な再婚生活でしたが、おふたりの仲睦まじい写真も残され、それはそれで意義のあった時間だったのだと伺えます。最初の夫の愛人には悩まされたけれど、2度目の夫の愛人は許せたのでしょう。46年間もの再婚生活の重みも感じます。
※写真はアガサ・クリスティーが失踪時にいたハロゲイトの風景です。