ドア、ドア、ドア… イギリスの玄関にはどんなドアがあるの??
2022.07.23
イギリスのお家にとても興味があります。散策しながら外から見ていても楽しいのですが、そう、イギリスのお家は裏庭が広く、外からではわからない素敵なバックガーデンが広がっているそうで、それを見る機会はなかなか恵まれません。なので、お家のドアを観る楽しみを見つけました。ドアなら入口付近にあります。イギリスのドア、玄関口にはそれぞれのお家の個性を活かしているそう。開けてももらうことはかないませんが、ロンドンの街をお散歩しながらドアの観察を楽しんでみました。
イギリスのドアは中開き
日本の玄関は外に向かって開きます。これは家では靴脱ぎを脱ぐ日本とは違うということなのでしょうか。玄関で靴を履いていたら、家族の誰かが帰宅すると中開きの場合、ぶつかってしまいそうです。特に狭い日本の玄関。外開きするのが当然なのでしょう。でもイギリスのお家のドアは中開き。ノックをすると、家主が中からドアを引いて迎えてくれます。靴のままお家に上がる習慣だからできることなのでしょう。最初は意外と気づかないのですが、ああ、日本とは違うと感じます。
また18世紀のヴィクトリア時代には、玄関ドアの横にboot scraperと呼ばれる泥除けを作っていたそうです。片足ずつ靴を入れて泥を落としていたみたいそのです。今では道路が舗装されているところも多いイギリスですが、かつては土と草地の道ばかり。お家に入る前に靴をきれいにしなければなりません。靴で入るお家にはそれなりの準備も必要というわけです。
イギリスの玄関近くにクロークという名のトイレ
イギリスの住宅の間取り図を見ていると、玄関横にトイレがありそこをクロークと呼ぶことがあるようです。イギリスの住宅にはいくつものトイレやシャワー、バスがあります。戸建てのお家の場合はそれがほとんど2階にあります。1階にトイレのないお家もあるようです。寝室に近い場所にトイレやバスルームを設置し、生活しやすくしているのでしょう。玄関近くのトイレはクロークの名の通り、靴や服なども収納しているようです。トイレとして使っているのかどうか、そんなお家に出会ったら次は訊いてみましょう。
※写真はロンドン南部のベクスリーヒースで見つけた1階建てのお家で、このタイプのお家はバンガローと呼ぶようです。玄関横にクロークがあるかどうか、お家を訪問しないとそれはわかりません。
世界で一番有名なドアは…
よくニュースなどで目にするのはイギリスの首相官邸のドア、ダウニングストリートの10番地。このドアは世界でも一番有名なドアかもしれません。映画やドラマで何度も登場しています。映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」のゲイリー・オールドマンも、「ラブアクチュアリー」のヒュー・グラントも、ドラマ「ザ・クラウン」のジリアン・アンダーソンも、このダウニングストリート10番地の扉を行き来しています。正面から撮影されることが多いので気づかなかったのですが、つり下がった門灯は鉄のアーチにかかっていました。
イギリスではこのダウニングストリート10番地はナンバー10と呼んでいます。イギリス首相官邸は国会が開催される議事堂に近くに、初代イギリス首相のために18世紀には用意されていたと言われています。黒い重厚なドアは、6枚のブラックオークのパネルで造られたジョージアンスタイル。ドアの上部にはアーチ状の明かり取りのガラス、中央のドアノブ、ライオンをかたどった鉄のドアノッカー、そして燦然と輝く10の文字。この10がイギリスの首相の代名詞となっています。
Postscript
ドアのことを書こうとイギリスの写真を探していたら、あの家が出てきてしまいました。ハムステッドのフェントンハウスを探している時に、何気に撮影した1枚の建物。とんがり屋根に丸い塔のあるその建物は、萩尾望都氏の代表作の中盤頃から登場していた家のモデルではないでしょうか… その作品は難しいテーマでしたので、実はつい最近になって全巻読破したところです。読後にハムステッドに出かけた時に、もっと時間をかけて漫画の舞台を見て回ればよかったと後悔しきりでした。でも信じられないことに、写真は撮ってあったのです。ご存知の方だけわかるお話で失礼しました。
思えばロンドンの街やイギリスに魅かれているのは、萩尾望都氏の作品に触れていたこともその要因だと思います。
「ポーの一族」の「ホームズの帽子」の最後のセリフ、「クリスマスは?」「ロンドンで」。エドガーとアランの動きのある画と、余韻を持たせたそのセリフ。もうこのシーンを見たらロンドンに行きたくなります。
でも人間ではない2人がキリストの誕生日を祝うわけではないのでしょう。クリスマスはただの季節の符号。2人の人間らしくいたいとの思いの表れなのでしょうか。
また名作「ポーの一族」は英語版がアメリカの出版社から2019年に販売されました。あの名作は何度も読み返しながら、英語ではどう表現するのか、自己流で英訳していましたが、とうとう英語で読めるようになりました。分厚くて重い書籍ですが、あの名場面を英語で読める楽しさ。時折眠くもなりますが、英語の「ポーの一族」を堪能しています。
※写真は萩尾望都氏の名作「残酷な神が支配する」の中でモデルとなった家。夏は生い茂る木でほとんど隠れていました。