John Lobb~From the United Kingdom

2022.05.05

英国史雑学

脚の怪我が原因で、老舗のブランドの靴を生み出したのですから、「災い転じて福をなす」ことになったジョン・ロブ。今では靴作りの名店として、ジョン・ロブの名を馳せています。

  • John Lobb~From the United Kingdom

ジョン・ロブは1829年コーオンウォールで生まれました。農家の家に生まれ、生涯コーンウォールで農業に従事する人生が、脚を骨折することで変わります。骨折だけでは大きな問題は生じなかったのですが、その手術が失敗してしまうのです。その後ロンドンで靴作りを身につけ、オーストラリアに渡ったジョン・ロブ。鉱夫たちが見つけた金の欠片を隠すために、踵に空洞のあるブーツを作り、それで財を成しました。

ロンドンに戻ってジョン・ロブは、リージェントストリートに靴の店を開きます。エドワード7世の英国王室ご用達に認定され、その靴作りは評判を呼びます。ビスポーク、顧客とよく話して作られた靴を作り上げます。足のサイズをはかり、足形を木で作ります。まずはトライアルのための靴が作られ、履き心地を試します。足先、甲の高さを調整してから、実際の皮革を使って靴作りを始めるという、丁寧な作りができるビスポーク。足に合わせた靴のフィット感は履いたものだけしかわからないようです。最高級の皮革と熟練した靴職人たちによって作り出される靴は、芸術品の領域です。

ラストと呼ばれる足の木型。ジョン・ロブには1万人ものラストが保管されています。ヴィクトリア女王のラストもあり、小さなおみ足だったことがわかります。ビスポークはフィッターが採寸、提案して作り上げるコミュニケーションの技でもあります。かつては足に合わないものを作らなかった職人もいたようです。デサインの好き好きと足型は違うと、その職人は言ったそうです。靴だけは履き心地が命。靴を長く使うためにビスポークされ、100以上の手作業の工程を経て、職人たちの技が結集した靴が作られています、

ジョンが足の怪我さえしなければ、このブランドは生まれませんでした。「怪我の功名」、「禍福はあざなえる縄のごとし」とジョン・ロブに当てはまる言葉がたくさん浮かんできます。人生、悪いことはないと思って生きていきたいですね。