夏はやはり海 イギリスの海水浴事情 19世紀は海水浴の行先で家柄がわかってしまった??
2021.07.18
イギリスの夏、ロンドン在住の友人たちは海に出かけることが多く、ソーシャルメディアによく写真が上がってきます。彼らが以前日本に遊びに来た時もちょうど夏。伊豆下田へ海水浴に出かけていましたっけ。以前真夏のイギリスを訪れた時、さほど暑くなかったので海に入る気分にはなれませんでしたが、地球温暖化が進むイギリスの夏も、相当暑い日が続くようになりました。数年前の6月、スペインでは気温45度。熱波が来ると天気予報が騒いでいました。今回はイギリスのビーチのご紹介と、かつての海水浴事情をお話しましょう。
海水浴の聖地はブライトン? ヘイスティングス? それともイーストボーン??
ロンドンから列車で1時間ほどのブライトンは、いち早く海水浴場として有名になりました。海の保養地として水族館などが立ったのが18世紀。まずはイギリスの代表的な3つの海岸をご紹介します。
ブライトン
高級なリゾートとしていち早く開発されましたが、温泉地のバースより人気はなく、19世紀半ばに大勢の海水浴客で賑わうようになります。ブライトンはロンドンから近いことも人気で、イギリスを代表する海辺のリゾートとなりました。
イーストボーン
元々この土地を貴族が有していたため、貴族が使いやすいリゾートとして開発が進みます。グランドホテルを建て、クリケット、フットボールのグラウンドやゴルフコースを造成しました。上流階級たちの人々を満足させるリゾートとして発展します。
ヘイスティングス
広い湾とピアー、コンサートやミュージカルを楽しめるパヴィリオンを有するヘイスティングス。海水浴以外の娯楽を求めて、ヘイスティングスを訪れるようになります。街並みも美しく、港町を散策するのも楽しそうです。
現代の列車でブライトンが1時間ほど、ヘイスティングスへも2時間ほどで到着します。イーストボーンはブライトンとヘイスティングスのちょうど中間くらいです。18世紀に鉄道が敷かれ、今よりもっと時間はかかったようですが、それでも列車で出かけられる海。人々がこぞって出かける気持ちはわかります。
※写真はイーストボーンの断崖。石灰岩の白い崖が迎えてくれます。
イギリスの海水浴の始まり
海水が身体によいと言われ始めた19世紀半ば、海に浸かることを目的に人々は出かけます。イギリス南部のブライトンはその海水リゾートのはしりです。ロイヤル・パビリオンやパレス・ピアの歴史的建造物も建ち、上流階級の人々が保養地として発展させたビーチがブライトン。
またマーゲイトでは「水浴機械」bathing machineがいち早く登場します。この「水浴機械」bathing machineとは、箱に入ったまま着替えて海に入るものです。まだまだ女性たちが人前で肌をさらすことができなかった時代に、海水浴の方法として使われた機械でした。箱の中で着替え、機械ごとそのまま海に進み、海に浸かったとようです。中は狭く暑かったようですが、温泉に浸かることと同じくらいに、海水浴も効能があると言われ、人々は海に入っていきました。
中流階級以上の人々が海辺に滞在するのは2週間から1カ月ほど、ゆっくりと海辺の夏を過ごしています。行先はブライトンかイーストボーン。かつてはこの海の行先で、その家の階級がわかってしまうと言われていました。
労働者階級の人々がやっと海に出かけるようになれるのは19世紀も終わりのことで、彼らの行く先はブライトンでもイーストボーンでもなく、マーゲイト。海水浴の日程も日帰りか、3~4日間ほどの滞在でした。
ある中流階級の家族たちは夏のブライトンの予約が取れず、泣く泣くマーゲイトを予約。列車に乗せるトランクのマーゲイトの文字を隠したとも言われます。海への行き先で階級が分かれてしまうとは、またイギリスらしいお話です。
※写真はいにしえの「水浴機械」bathing machineのあるヘイスティングスの海岸。
恐竜といっしょに泳げる海
2021年のG7(Group of Seven)は、イギリスのコーンウォールで開催されました。海と砂浜の美しさを見て、ぜひ一度は訪れたいと海だと思いました。コーンウォールはイギリス南西部、細かい砂の海岸が魅力的です。ただし首脳陣が宿泊したホテルは今1つだったとの噂でしたが…
コーンウォールはロンドンからは遠く離れていますが、イギリスによくある砂利と石の海岸とは趣が異なります。
またポーツマスやワイト島に近い場所に、2001年に世界遺産に登録された自然遺産のジュラシック・コーストがあります。恐竜が海水に頭を浸けて、何か獲物を探しに海岸を訪れたような造形物が自然とできあがったこの海岸。これがダードル・ドアの天然橋です。
しかしここもロンドンから遠く、朝の5時過ぎの列車で約4時間半、乗り換えに次ぐ乗り換えで最寄り駅に到着するのが10時近くとなります。駅からも相当歩きそうですが、好天に恵まれた夏の朝にぜひ出かけたいダードル・ドアの天然橋です。